こんにちは!アスレティックトレーナーの岡野です!
前々回から、呼吸がどのように体幹機能や姿勢に影響を及ぼしているか。姿勢の保持や動作の中で「体幹」を機能させるにはどういった機能が必要なのかといったことをまとめています。
「体幹トレーニング再考- 呼吸の視点から体幹機能を考える1-」No.17
「体幹トレーニング再考- 呼吸の視点から体幹機能を考える2-」No.18
体幹とはなんぞや?という定義から始まり、
体幹の役割や機能といったような基礎知識を整理しながら、
体幹を固定(安定)する方法をまとめていきました。
今回はそのような話を踏まえた上で、「体幹トレーニング」を姿勢の改善や競技動作に繋げていくためにはどうしたらいいか、実際にどのように考えているのかをまとめていきたいと思います。
もちろん、アスレティックトレーナーとしてはまだまだ若輩者の一意見ですので、今回紹介する内容以外にも色々な意見があっていいと思います。正解はない分野なので。
ただ、こういった考え方もあるんだなと参考にしていただければ幸いです。
目次
体幹トレーニングを考える前に
私はトレーニングというのは、
①トレーニングは頑張ればいいってもんじゃない(努力は直接結果にあらわれない)
②トレーニングはあくまで手段であり目的ではない
③目的や目標が変わればトレーニング内容も変わる
という考えです。
ここ近年、SNSやインターネットで情報が簡単に手に入れられる時代となりました。トップアスリートやトレーナーの方がSNS上でトレーニングを動画で紹介されていることも多く、一般の方でもたくさんのトレーニング方法を学べる機会が多くなったと思います。
しかし、トレーニングが良い方法(何に対して良い方法かはおいといて…)だったとしても、あなたが同じ方法でトレーニングをして望んだ結果を残すことができるかというとそれがイコールとは限りません。
トレーニングを結果に結びつけるには
- 自分の現在地を認識した上で目的に向けてしっかりとした計画を立てる
- 今の自分にあったものを選択する
- 質高く実施する
ことが大切だと思っています。
その為には「目的地」と「現在地」がしっかり理解できていないと、今のあなたに必要な「手段」が選択できていない可能性があるので、そこを考える必要があります。
*詳しくはこちらのブログにてまとめてありますので参考にしていただければ↓
「トレーニングを効率的に結果に結びつける為に行うべきことは、まずは目的地と現在地の確認を」No.6
また、今までも今もアスリートを対象にアスレティックトレーナーとして活動することが多いので、
トレーニング指導をする時に、どのように身体を捉えているのか/考えているかというと
パフォーマンス向上やケガの予防、コンディションの維持のために
姿勢の改善や効率的な動作を学習し、身体の揺らぎを作りながら(選択肢を作りながら)
自分の身体を自分の思い通りに動かせる範囲を広げていけるようにアプローチしています
こういった考え方や捉え方を前提に今から体幹トレーニングについてまとめていくのでご了承ください。
体幹トレーニングの段階と分類
さて、それでは本題に入ります。
私は体幹トレーニングを大きく3つの段階で考えています。
それは
- 関節の位置を整える(腹腔内圧をコントロールするために、胸郭や骨盤、呼吸の状態を整える)
- 腹部の固定(いろんな姿勢において腹腔内圧をコントロール(姿勢の制御)できるようにする)
- 腹部の固定と分離(いろんな姿勢において腹腔内圧コントロールしながら、四肢を動かす)
ということです。
前回のブログでも説明しましたが、体幹を固定(安定)するためには「腹腔内圧を円柱のユニットで高める」方法で固定できると、身体的には効率が良いと説明してきました。
そのため、トレーニングではなるべく「腹腔内圧」で体幹をコントロールできる動作の範囲や強度を高められるように進めていきます。
また、その過程で競技動作や普段の私生活での動作を「無意識に」安定してコントロールできる範囲を広げられるように
- 動作を制御すること
- 動きを作ること
に分けながら、運動の方向(屈曲・伸展・側屈・回旋)や姿勢、使う部位などを組み合わせて下記のように分類し動作(身体の使い方)を学習できるようにアプローチしていきます。
それでは、段階ごとに詳しくみていきます。
段階1:関節の位置を整える
姿勢が悪い人や動作に偏りがある人は注意
まず、体幹トレーニングで初めに行うことは「腹腔内圧が適切にコントロールできる状態か」を確認していきます。
姿勢が悪い人やいつも行なっている動作に偏りがある人などは、骨盤が前傾していたり、下部肋骨が突出(外旋位)したり、呼吸が浅い人が多く円柱のユニットが機能しない為、腹圧がうまくコントロールできない方が多いです。
そういった方は体幹だけに限らず、その姿勢によって使いやすい筋肉を使って身体を安定させたり、運動したりする割合が増えてきます。それと同時に、使いにくい筋肉は使わなくなるので、過剰に使う筋肉とあまり使わない筋肉の割合が大きくなっていきます。
そうなってしまうと身体のバランスが崩れ、得意な姿勢や苦手な姿勢、得意な動きや苦手な動きへとつながり、身体を効率よくコントロールできなくなってしまいます。
また、このような状態が続くと、ヒトはより使いやすいものを使って運動し、苦手な姿勢や動きに対しては非効率的な動作で代償します。その結果、身体はねじれをおこし、特定の関節や筋などに過剰に負荷がかかることで、さらに腰痛や肩こり、膝の痛みといった身体の問題へと繋がっていくこともありますし、効率的な動作がしづらいこともありパフォーマンス向上の妨げとなってしまいます。
こういった方が体幹トレーニングを行う場合は注意が必要で、なにも考えずにトレーニングを行なってしまうと自分が使いやすい筋肉のみを使って体幹を安定させようとする為、「腹腔内圧」を使って体幹をコントロールすることができず、トレーニングの目的がずれてしまったり、トレーニングの効果が身体へ反映されづらくなります。
また、仮に効かしたい筋肉にアプローチができても、根本の姿勢や動作へのアプローチができていないと体幹トレーニングのときには使えていたのに、他の動作の時には使いづらい。トレーニング直後は意識できていたけども時間が経つと元に戻ってしまう。といったこともあるので、姿勢が崩れていたり動作に偏りがある方はまずは関節の位置を整えて、腹腔内圧がコントロールできる状態を作り、そこで安定させることが大切です。
関節の位置を整えるために
私は、関節の位置が偏ることへの身体への影響やそのアプローチに関してPostural Restoration Institute® (以下PRI)という教育機関が提唱しているコンセプトやエクササイズを取り入れています。
*PRIに関してはこちらのブログ参照→「ヒトの身体は左右非対称である(PRIについて)」No.9
*PRI本部ウェブサイト https://www.posturalrestoration.com/
*PRI JAPANウェブサイト https://www.prijapan.llc/
PRIのエクササイズでは、
呼吸を適切に行いながら、あまり自分の思い通りにできていない筋肉に刺激を入れ、逆に過剰に働き過ぎている筋肉を抑えるように筋肉のバランスを取り戻していきながら、各関節を適切な位置に戻し、エクササイズによって各筋肉や運動パターンを再教育していきながら、身体を元の状態に戻していくようにアプローチしていきます。
前回のブログでも説明しましたが、横隔膜を使った呼吸ができない状態ではないと腹腔内圧はコントロールできません。
なので、「呼吸がうまくできない」状態であれば横隔膜をつかった呼吸ができるように骨盤や胸郭とともにアプローチをしていって、「関節」が適切な位置になるように、「腹腔内圧」が適切にコントロールできるように身体を整えていきます。(PRIではリポジショニングともよばれていますね)
もちろん、姿勢や動作も改善されていくことができます。
エクササイズでは、腹部の「腹直筋」「腹横筋」「外腹斜筋」「内腹斜筋」だけではなく、ハムストリングスや内転筋群、臀筋群などの股関節周囲にある筋や、前鋸筋や僧帽筋などの肩甲骨周囲の筋群といったたくさんの筋肉を促通したり、抑制させたり、統合していって身体を整えていきます。
どのようなエクササイズがあるかは、PRI JAPANのSNSでも紹介されているので興味がある方は参考に見てみてくだい。
*こういった専門のトレーニングができない方はとにかく「息を吐く」だけでもいいので呼吸をしっかり行うと整ってきます!
段階2:腹部の固定
関節の位置を整えて、腹腔内圧がコントロールできる状態を作れるようになってきたらいろんな姿勢において腹腔内圧をコントロール(姿勢の制御)しながら姿勢が維持できるようにしていきます。
いろんな姿勢をコントロールするには「姿勢と方向」「随意的と応答的」ということを考えると良いかなと思います。
姿勢と方向
まず姿勢と方向ですが
姿勢によって、姿勢を維持するのに主体となる筋が変わってきたり、稼働する筋の数がかわってきます。
姿勢は大きく分けると
- Supine :背臥位(仰向け)
- prone :腹臥位(うつ伏せ)
- Sidelying :側臥位(横向き)
- kneeling :両膝立ち
- half kneeling:片膝立ち
- Sitting :座位
- Standing :立位
といった感じで分けています。
姿勢だけではなく、頭や手、足の位置、手や足のスタンス、支持点の位置、重心の位置、扱う道具などをレベルによって変えていくと、負荷やバリエーションなどが増えていきます。
また、どの方向の運動をコントロールしたいかによって
- Anterior Core :抗伸展
- Posterior Core :抗屈曲
- Lateral Core :抗側屈
- Rotary Core : 抗回旋
といったようにもパターン分けすることができます。
姿勢や動作をコントロールするときはある1つの筋肉だけでは制御しません。色々な筋肉が力を発揮しながら、協力しながらタイミングをとりながら身体をコントロール(制御)するので、「◯◯筋」のトレーニングというような考え方ではなく「どの動きの制御をするトレーニングか」という考え方をしてみるといいかもしれません。
この動きをこの姿勢でコントロールしたいのならば、どんな筋肉が頑張らなくてはいけないのか。
といった視点で考えてみると効率的な身体の使い方が見つかってくる場合もあります。
随意的と応答的
先ほど、体幹トレーニングの分類をしたとき「随意的と応答的」と分類しました。
随意的:自分の意志によって行われる運動
応答的:姿勢や環境といった刺激に対する反応
といったような意味になりますが、「自分で姿勢を意図的に制御するために行った動作」なのか「結果として姿勢を制御するために身体が反射的に行った動作」なのかによって中身が変わってきます。
後ほど説明する「体幹と四肢を分離する」ような動作を力みなく制御したい場合やアスリートなど競技動作につなげていきたい場合は後者の方を選択する場合が多いです。
もちろん、どっちかだけではなく随意的と応答的を統合させたトレーニングももちろんあるので、目的や段階によって使い分けながらできるといいかなと思います。
段階3:腹部の固定と分離
腹腔内圧をコントロールするために、胸郭や骨盤、呼吸の状態を整えて、
色々な姿勢でも腹腔内圧で姿勢をコントロールできるようになってきたら
動作の中で体幹がうまく使えるようにトレーニングしていきます。
先ほど、ちらっと説明しましたが「体幹と四肢を分離する」ように腹圧によって腹部を固めながら、手や足は自由に動かしていくトレーニングをしていきます。
体幹を固めるために、お腹で力いっぱい固めたはいいけども手や足もガチガチになっていた…!では動作はスムーズにできないので、そうならないために「応答系」のトレーニングを中心に腹腔内圧で体幹をコントロールしながら手や足といった四肢を動かしていきます。
トレーニングの考え方は基本的には段階2と一緒で
「どの姿勢で、どの方向で、どこを動かしてやるか」を考えることによって負荷やバリエーションが変わってきます。
腹部を固定した状態で手を挙げたり…胸郭を回旋したり、股関節を動かしてみたり…考え方によっては色々とできますし、考え方によっては腕立て伏せやスクワットというような種目も立派な体幹トレーニングにもなります。
トレーニングにおいて注意すべきこと
体幹トレーニングは、目的によって「何をどのようにやるのか」が変わってきます。
今回は「姿勢の改善や競技動作に繋げていくためにはどうしたらいいか」という内容で話してきましたが、
この種目をやってれば大丈夫!というエクササイズは存在しませんし、
そのエクササイズを「どのように行っているか」というのが大切になってきます。
例えば、あるエクササイズをするにしても腹腔内圧がコントロールできない姿勢で広背筋や腰部の筋で体幹を固めていても、それは目的にあったフォームや身体の使い方ではないかもしれません。
特に負荷が上がっていくとそのような体の使い方のクセが出てきやすいので、注意が必要です。
私はそういった場合は「呼吸」をしっかりさせた上でおこなわせ、「結果的に」腹腔内圧で体幹をコントロールする環境を作っていきます。そうすると腹腔でコントロールする範囲が増えた状態でエクササイズを行うことができます。
なのでそういったこと踏まえながら、エクササイズの段階やレベル、方法などを考えていくと結果につながりやすいかなぁと感じます。
まとめ
「呼吸」の話の流れから「体幹トレーニング」の話をしてきました。
「お腹を固める」とはどういうことかを呼吸の視点で考えた結果、
腹腔内圧を円柱のユニットで高め、そいの状態を維持したままいろいろな姿勢や動作ができるようになってくると姿勢の改善や競技動作に繋げやすくなり、パフォーマンスの向上や傷害予防に繋がってくるのかなと思うので、参考までに取り入れていただけるといいかなと思います。
【参考文献】
1.パトリック・マキューン(2017)『トップアスリートが実践人生が変わる最高の呼吸法』、かんき出版
2.森本貴義、近藤拓人(2018)『新しい呼吸の教科書』、ワニブックス
3.大貫崇(2019)「呼吸力」こそが人生最強の武器である、大和書房
4.坂井 建雄(2016)『プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版』、医学書院
5.大貫崇『臨床スポーツ医学』Vol.38.No3(2021-3)p254-259、文光堂
6.PRI本部ウェブサイト https://www.posturalrestoration.com/
7.PRI JAPANウェブサイト https://www.posturalrestoration.com/japan/home
【合同会社noma】
都内や埼玉、神奈川を中心にパーソナルトレーニングを行なっています。
「なりたい自分、ありたい自分へ。」をコンセプトに、
- トップアスリートからスポーツ愛好家まで、スポーツにおけるハイパフォーマンスを追い求める人
- 仕事や家事・趣味など、身体に対して日々安定したパフォーマンスを求める人
を対象として、アスレティックトレーナーがトレーニング・リハビリテーションを通し、その人の「なりたい自分」「ありたい自分」に向けて共に試行錯誤しながら成長する場を目指しています。
nomaでは筋力や可動域向上や身体の使い方の改善といったスポーツのパフォーマンス向上はもちろんのこと、身体の悩みや痛み・不調に対して、エクササイズを通して「根本的な原因」にアプローチし、身体機能や姿勢の改善をしながら目標に向けてアプローチさせて頂きます!(お身体でお困りの方は相談から承ります。)
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