「体幹トレーニング再考- 呼吸の視点から体幹機能を考える1-」No.17

こんちにちは!アスレティックトレーナーの岡野です!

前々回から「呼吸」が身体のコンディションにどのように繋がるかを説明させて頂いていますが、

「呼吸からみる身体の整え方-呼吸が身体に与える影響-」No.15

「呼吸からみる身体の整え方-息は吸うことより吐くことが大切-」No.16

実は、パフォーマンス向上にもこの「呼吸」は大切になってきます。

というのも、体幹機能や姿勢は、「呼吸」と相互関係にあります。

体幹機能や姿勢が悪ければ、呼吸の状態にも影響が出ますし、

呼吸の状態が悪ければ、体幹機能や姿勢に影響が出ます。

ということは、この関係性を無視して体幹トレーニングを行っても体幹機能の向上は最大限にできませんし、

姿勢を良くするためにトレーニングやストレッチをしても一時的な効果はあるものの、それだけでは改善することはできません。

「身体がブレないように」とか、「体幹が大切」とか聞きますが、ちゃんと体幹の構造を理解してトレーニングを行わないと自分が得たい効果はなかなか得られません。

なので、今回から呼吸がどのように体幹機能や姿勢に影響を及ぼしているか。

どのような考えで「体幹トレーニング」を考えたらいいかを何回かに分けていきたいと思います。

今回は、体幹とは?ということで構造や役割などの基礎知識や、「体幹を固める」とはどういうことなのかをまとめていきたいと思います。

体幹とは?

体幹の定義

「体幹」という言葉を聞いて、みなさんは身体のどの範囲を指しているかイメージできますか?

本や人によってこの「体幹」の定義は結構曖昧で人によって意味合いが違うこともありますが、

体幹は「脊柱・胸郭・骨盤を含む体幹全体」というように定義させていることが多いです。

図の引用:

体幹トレーニングをするときに、腹壁の筋肉(腹直筋や外・内腹斜筋、腹横筋)や背中(脊柱起立筋や広背筋)をイメージする人は多いと思いますが、体幹は平面ではなく「円柱」のような立体で構成されています。腹壁や背中の筋肉だけではなく、上部にあたる「横隔膜」、下部にあたる「骨盤隔膜」を含めて考えないと体幹としての機能が十分に発揮しづらくなります。なので、体幹はそれぞれがユニットとして働くと捉えていただければと思います。

体幹の役割

体幹の役割は大きく4つあります。

【姿勢の保持】

重力やジャンプの着地といた運動の衝撃に対して、脊柱ではS字カーブを描いて荷重ストレスを和らげる役割を果たり、体幹の筋肉や腹腔内圧のコントロールにより姿勢の維持をします。

【脊柱の運動】

背中を丸めたり、伸展させたり、回旋させたり…といった脊柱の動きももちろん役割の1つです。脊柱は屈曲、伸展、側屈、回線の動作があり、これらを組み合わせることによって動作を行います。

【四肢の動きの土台となる】

手を上げる、足を上げるといった動作を行う場合、実は体幹が固定点となることにより四肢を動かすことができます。そのため、体幹が機能していないと下の図の右側のように手を上げたときに脊柱も動いてしまうことになり適切な動作が行えないことがあります。本来ならば手をあげる動作の時は脊柱の側屈は必要ないのですが、体幹が固定できていないとそのような動きにつながる可能性があります。(このとき肩に痛みがある、可動域に制限があって代償することもあります)

【四肢への動きを伝達する】

走る、跳ぶ、ボールを投げる、蹴る、バットやラケットを振るといったスポーツにおける複雑な動作は手や足など四肢の動きによってもたらされます。ただ、そういった四肢の動作のもととなっている力は下半身や体幹、地面半力から伝わる力により成り立ちます。

このように体幹にはいろいろな役割がありますが、体幹が安定していないと、姿勢や色々な動作に影響を与えます。体幹が適切に機能していないとスポーツの場面ではいわゆる「重心や運動軸がぶれた」状態になり、効率の悪い動作に繋がります。そうなってしまうと適切な姿勢を維持したり、バランスをとったり、力を伝達できないので、パフォーマンスにも関わってきますし、身体の痛みやケガの原因になる可能性が高くなってしまいます。

そのため、適切な姿勢の維持や効率の良い動作を行うためには体幹が安定して機能することが大切になってきます。

体幹が機能するとは

ここが今回の本題となってくるかと思いますが、「体幹が機能しやすい状態」とはどういったことなんでしょうか?よく「体幹を安定させろ!」とか「「お腹を固めて!」「丹田に力を…」と言われた経験がある人も多いと思いますが、

なぜ体幹を固定(安定)させるのか?

どうやって体幹を固定(安定)すればいいのか?

を理解することによってどうして体幹トレーニングが必要なのか、どのような体幹トレーニングが必要になってくるのか理解できてくると思うので説明していきたいと思います。

体幹を固定(安定)する理由

脊柱は椎骨という骨が連結して(1つ1つ積み重なって)成り立っています。特に腰椎を支える骨は他になく、靭帯などで補強されていますが胸椎などに比べると構造上不安定です。

腰椎が不安定だと外力によって椎体が過度に動いてしまいます。そうなると姿勢の維持が難しくなるので、「身体がブレる」というような重心が身体の中心軸から離れたり、運動軸から離れたり、四肢の動きを効率よく行うことができなくなるので、上記に書いた体幹の役割を効率よく行うことができなくなります。

また過度に腰椎が動くことにより腰部自体にストレスがかかりやすくもなりますし、体幹が固定できないことによって、股関節や胸郭の動きに支障がでて、膝や足関節、肩や肘など身体全体に代償がでてしまう可能性も高くなります。そうなると効率的な動作ができないことにより、パフォーマンスが思うように向上しないだけではなく、ケガが発生する確率が高くなる原因に繋がってしまうこともあります。

なので、そのような腰椎の不安定な構造を補うために体幹で固定(安定)させる必要があります。

*その他には内臓を保護することも体幹で固定(安定)する理由の1つになります。

体幹を固定する方法

ヒトが「体幹を固定」する手段は3つあります。

  1. 腹直筋などのお腹の筋肉を意図的に収縮させる
  2. 脊柱起立筋などの筋が過度に緊張する
  3. 腹腔内圧を円柱のユニットで高める

【1.腹直筋などのお腹の筋肉を意図的に収縮させる】

1つ目は、お腹の筋肉を「ギュッ」と意図的に収縮して固める方法です。お腹にパンチをくらう時に咄嗟に行った経験がある人もいるかもしれませんが、この固め方は運動には不向きです。試しにやってみて欲しいのですが、お腹の筋肉を意図して収縮させるとお腹は固まるかもしれませんが、そこから脊柱の動きや四肢の動きはしづらくなります。また、じゃあそのままお腹を固めたまま1時間…といわれても難しいですよね?なので、この方法は咄嗟に腹部を固定させる必要がある時には有効な手段かもしれませんが、運動中や日常生活の中で体幹を常時固定(安定)させる方法としてその手段を選択するのは効率的ではありません。

【2.脊柱起立筋などの筋が過度に緊張する】

2つ目は、脊柱起立筋や広背筋などの筋肉が過度に緊張することによって体幹を固定する方法です。これも筋肉を収縮させていますが1つ目と違うのは体幹の固定を意図的ではなく、無意識に行うことです。後ほど説明する腹腔内圧がコントロールできない人や反り腰、猫背など姿勢が悪い人がこの手段を使って体幹を固定させている人が多いです。(姿勢が悪くなさそうに見える人でも呼吸が乱れているとこの固定の方法になっている人が多いです)それは3つ目の方法ができていないことにより、この方法でしか体幹を固定「するしかない」状態になってしまっているので日常的に脊柱起立筋や広背筋などの筋肉を使って(*姿勢によっては腹直筋を過度に緊張させて)体幹を固定させています。その為、この方法の割合が多いと3つ目の方法を使って体幹を固定するよりも身体の負担は大きく、運動中や日常生活の中で体幹を常時固定(安定)させる方法としては不向きなので、プレー中に身体がブレたり怪我につながる原因になりやすいです。

【3.腹腔内圧を円柱のユニットで調整する】

3つ目は、「腹腔内圧」を高めることにより体幹を固定する方法です。腹腔内圧とはIAP(Intra-abdominal pressure)と呼ばれることがあります。腹腔とは内臓が収まっている場所を指しますが、横隔膜が下に移動することにより内臓を上から圧迫します。その時腹部を下から支える骨盤隔膜(骨盤底筋群)が内臓を押し返すことで腹部の圧が高まります。この「圧迫力」が椎体を支えて体幹の安定性を維持します。この方法が一番身体にとって効率的な固める方法となるので3つの方法のなかでも身体がブレることは少なく、身体を思い通りに動かせる範囲は広くなります。また、筋肉を収縮させたり、緊張させたまま固定はしないので、運動中や日常生活の中で体幹を常時固定(安定)させる方法として適切です。ただし、肋骨や骨盤が適切な位置になかったり動かなかったりしたり、呼吸が適切にできていないと横隔膜がうまく動かず、この方法で固定することが難しくなります。

森本貴義、近藤拓人(2018)『新しい呼吸の教科書』ワニブックスp46から引用

日常生活やスポーツ場面での大半は腹腔内圧を高めて体幹を固定させたいのですが、他の2つは不必要な固め方かというとそうではありません。というのもスポーツ動作を行う場面では1の方法も、2の方法も必要な時があります。なので、この3つの手段を日常生活やスポーツ場面で使い分けできるのが理想です。

まとめ

今回、体幹は「脊柱・胸郭・骨盤を含む体幹全体」というように定義し、腹壁だけではなく、横隔膜や骨盤隔膜を含めた円柱のユニットとして機能していかないと運動中に求められる適切な体幹機能を果たすことはできないと説明してきました。

また、体幹を機能させるということは「いかに腰椎を安定させるか」ということがまずは大切になってくるので、運動中や日常生活の中で体幹を固定(安定)させる方法としては腹腔内圧を高められるようにしていくと身体の負担も少なく、効率よく体幹を安定させることができます。

ただ、なにも考えずにいわゆる腹筋やプランクといった体幹トレーニングを頑張っていても、スクワットやデッドリフトといったウエイトトレーニングに励んでも、競技練習を行っていても腹腔内圧を高めた状態で体幹を固めずに、筋肉を緊張させることで体幹を固めて運動を行ってしまってはパフォーマンスには繋がっていきません。

いかに腹腔内圧を高めた状態にするかが大切になってくるので、そういうことを考えながら日頃のトレーニングや練習ができるとより良いかなと思います。

次回は、腹腔内圧を高めるために円柱のユニットを機能させるためにはどうしたらいいかをまとめていきたいと思います。

【参考文献】

1.パトリック・マキューン(2017)『トップアスリートが実践人生が変わる最高の呼吸法』、かんき出版

2.森本貴義、近藤拓人(2018)『新しい呼吸の教科書』、ワニブックス

3.大貫崇(2019)「呼吸力」こそが人生最強の武器である、大和書房

4.坂井 建雄(2016)『プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版』、医学書院

【合同会社noma】

都内や埼玉、神奈川を中心にパーソナルトレーニングを行なっています。

「なりたい自分、ありたい自分へ。」をコンセプトに、

  • トップアスリートからスポーツ愛好家まで、スポーツにおけるハイパフォーマンスを追い求める人
  • 仕事や家事・趣味など、身体に対して日々安定したパフォーマンスを求める人

を対象として、アスレティックトレーナーがトレーニング・リハビリテーションを通し、その人の「なりたい自分」「ありたい自分」に向けて共に試行錯誤しながら成長する場を目指しています。

nomaでは筋力や可動域向上や身体の使い方の改善といったスポーツのパフォーマンス向上はもちろんのこと、身体の悩みや痛み・不調に対して、エクササイズを通して「根本的な原因」にアプローチし、身体機能や姿勢の改善をしながら目標に向けてアプローチさせて頂きます!(お身体でお困りの方は相談から承ります。)

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