こんにちは!アスレティックトレーナーの岡野です!
いきなりですが、皆さんは日々パフォーマンスを向上させるため、健康を維持するために何に気を付けていますか?
もう少し噛み砕くと、どういった情報をもとに自分の身体の状態を把握していますか?
おそらく多くの人が、
- 主観的な感覚(疲労感や気分など)
- 身体の症状(痛みや頭痛、熱など)
- 睡眠の状態、寝る時間や起きた時間(昨日寝てないから…。寝る時間が遅かった/早かったから…。)
- 体重や体温といった数値
- 食べ物や水分といった身体の中にいれるものの量や質、タイミング
- 運動や練習、トレーニングといった時間や回数、質
といったことをなんとなく気にして生活している方は多いと思います。
また、そういった情報をもとに、コンディションを維持したり、身体を狙った状態にするために
- マッサージやストレッチといったカラダのケアをしたり
- 運動の時間や内容を調整したり
- 栄養を考えて食事やサプリメントを摂ったり
- 睡眠時間を多く取ったり
- 仕事を休んだり
といったことをして身体の調整をしている方も多いのではないかと思います。
では、「呼吸」はどうでしょうか?
『トップアスリートが実践人生が変わる最高の呼吸法(かんき出版)』という本の冒頭で、
著者のパトリック・マキューン氏はこういっています。
人間は何も食べなくても数週間は生きられる。
しかし、呼吸を止めると、わずか数分で死んでしまう。
それなのに、食べ物や飲み物にはかなり気をつけている人でも、呼吸についてはほとんど無頓着だ。たいていの人は、健康のためにには何をどれぐらい食べ、水をどれぐらい飲めばいいか知っているだろう。量が多すぎても、少なすぎても問題になる。
それに体のためにきれいな空気を吸ったほうがいいということも、誰もが知っている。
しかし、空気の「量」についてはどうだろう?
そもそも空気は、ある意味、水や食べ物よりも大切だ。
健康のためには、どれぐらいの量の空気を吸うのが理想的なのだろうか。
食べ物や水に適正量があるのなら、空気にもあってしかるべきだろう。
体内に取り込む空気の量は、肉体に大きな変化を起こす可能性を秘めている。
パトリック・マキューン(2017)『トップアスリートが実践人生が変わる最高の呼吸法』、かんき出版 p15-16
私が初めてこの本を読んだときに、「確かに」と思わずつぶやいてしまいました。
先ほど言ったように、身体の状態を把握するために気にすることとして気を付けていることはたくさんあっても
呼吸の状態を気にする人は少ないかと思います。
前回のブログでは、呼吸の状態が悪いといくらトレーニングを頑張っても栄養をとっても、ケアに時間を割いても身体が整わない可能性があるということをお伝えしました。
色々頑張っていてもなかなか痛みが消えなかったり、疲れが取れなかったり、トレーニングの効果が現れない人は
もしかしたら、呼吸の状態が整っていないことが原因の1つになっているかもしれません。
ですが、ほとんどの人が呼吸について「知らない」「気にしていない」ことが多いのでここが見逃されてることが多く、呼吸へのアプローチまではできていない人が多いのでは?と感じています。
なので、これを読んでいただいた方に「呼吸の状態」も気にしていただいて、身体を整えるための1つの選択肢にしていただければいいなと思っています。
目次
カラダにとって「やりすぎ」「やらなさすぎ」はパフォーマンスや健康を妨げるものが多い
ヒトが「良い状態」を保つためには方法だけではなく適切な量や頻度、タイミングを考えることは大切です。
運動のしすぎも、しなさすぎも、
寝過ぎも寝なさ過ぎもコンディションを妨げる原因になりますし、
栄養の摂り過ぎ、取らな過ぎももちろんコンディションを妨げる原因になります。
適量であれば、身体にとって良い影響を与えるものでも、その「量」が多かったり少なかったりすると身体に悪影響を及ぼすものは多く、それは「呼吸の量」も例外ではありません。
なので、パフォーマンスの向上や健康を保つために
- どのように呼吸をしているのか
- どのぐらい息を吸っているのか
- どのぐらい息を吐けているのか
- どういった量のバランスをとっていかないといけないのか
といった呼吸の状態や量を知ることはとても大切になってくるので、この機会に呼吸の状態を考えてみましょう!
呼吸の基本
呼吸の状態を知ってく上で、私たちは普段どのような呼吸をしているのか。どのぐらい呼吸をしているのかを説明していきます。
ヒトは1日に約2万回呼吸をする
前回のブログでヒトは「脳」と「身体」に酸素を供給するために呼吸をしているといいましたが、
適切に脳や身体に酸素を供給するために1日に約2万回も呼吸を行なっています。
1日の中で運動をしたり、寝たり、ご飯を食べたり、仕事をしたりというように活動レベルは変わってくるので、
走れば自然と呼吸が速くなり回数も多くなりますし、
寝たり休んでいる時は呼吸がゆっくりとなり回数も運動しているといと比べれば少なくなりますし、
怒ったり、緊張したりしても呼吸の状態は変わってきます。
このようにココロやカラダの状態・状況、必要性によってその時に適切な呼吸の量や回数・方法を無意識に選択し、酸素が供給できるように調整しています。
呼吸の種類
日々の生活の中で、運動の強度などによって適切な呼吸の量を調整するために安静時呼吸と努力時呼吸という2種類の呼吸の方法を使い分けています。
肺には筋肉はなく単独では呼吸ができないため、身体の状況によって使う筋肉を使い分けます。
【安静時呼吸】
- 静かでゆっくりとした呼吸
- 横隔膜を上下動させることによって呼吸をしている
- 主に使われる筋肉:横隔膜、肋間筋、腹筋群、骨盤底筋群が使われる
安静時呼吸は言葉の通り、主に身体を休めている時や日常の生活時での呼吸です。
息を吸う時に横隔膜が収縮し下降することにより肺に空気を取り込み、
息を吐くときには横隔膜が弛緩し、ドーム状に上方へ膨らむことによって肺から空気を吐き出します。
【努力時呼吸】
- 強度の高い運動時などで多くの酸素が必要なときにする呼吸
- 首や肩、鎖骨周辺の筋肉、背筋群の筋肉を使って鎖骨を引き上げることで胸郭を拡張する
- 主に使われる筋肉:安静時呼吸の筋肉に加えて首や肩、鎖骨周辺の筋肉、背筋群が使われる(呼吸補助筋とも呼ぶ)
努力時呼吸は、運動時などの酸素が多く必要なときに呼吸補助筋と呼ばれる筋を使う呼吸です。
息を吸う時は、首や肩、鎖骨周辺の筋肉を使います。肩で息をすると言われますけど、そのようなイメージです。
息を吐く時は、腹筋群などを使って息を息を吐きます。
【安静時呼吸と努力時呼吸のバランス】
日常生活の多くは、そこまで大量の酸素を必要としないため、基本的には1日のほとんどを「安静時呼吸」で呼吸していることが多くなります。
運動をするとき、走る時などは、大量の酸素が必要になる時もあるので「努力時呼吸」を使う時も使いますが、ヒトは横隔膜を使った呼吸をベースに活動しています。
呼吸の状態が悪いとは…
ここから今回の本題となる呼吸の状態が悪いというのはどんな状態かを説明してきます。
呼吸の状態が悪いときは、呼吸量が増加(換気量が増加)していると言われています。
意外と思われるかもしれませんが、息の吸いすぎは身体によくありません。
なんらかの理由で日常的に呼吸量が増加(換気量が増加)してしまうと、
酸素を脳や身体にうまく取り組むことができず、身体に悪い影響を与えてしまいます。
では、なぜ呼吸量が増加してしまうのか、呼吸量が増加してしまうと身体にはどのような影響があるかを説明します。
呼吸の量が増加する原因
- 健康状態が悪い
- 心身ともにストレスが多い生活を送っている(疲労が多い、精神的にストレス抱えているなど)
- 偏った食生活をしている
- 運動不足(座った姿勢が多い)
といった生活を送っていると脳と身体が緊張状態になり、呼吸が荒くなってきます。
呼吸が荒い状態というのは、「努力時呼吸」で使われる首や肩、鎖骨周辺の筋肉が働きます。
この荒い呼吸が一時的ならば問題ないのですが、日常的にストレスを受けていると、この荒い呼吸が慢性化し、
日常的に「努力時呼吸」で呼吸をすることになるので、1日における努力時呼吸の割合が増えます。
1日における努力時呼吸の割合が増えると、「安静時呼吸」で使われる横隔膜や腹筋群といった筋肉がだんだんと使われなくなっていきます。
そうなってくると横隔膜などの筋肉が衰えてくるので、本来は努力時呼吸のときにだけがんばればよかった首や肩、鎖骨周辺の筋肉が安静時にも使わらなければならず、これがさらに身体の過緊張と疲労の原因になります。
結果的に、安静時呼吸の割合が減って横隔膜がつかえない状態になり、努力時呼吸の割合が増えて呼吸補助筋が常に呼吸筋として使われる状態になると呼吸量が増加(換気量が増加)していきます。
*首や肩、鎖骨周辺の筋肉は日常的に呼吸をするための筋肉ではないので、努力時呼吸が慢性化し、1日の大半をこの筋肉で呼吸をすると、使いすぎになってしまい、肩こりや首の痛み、頭痛、腰痛の原因になります。
呼吸量増加による身体への影響
「呼吸量が増加していく」と聞くと、一見良いことだと思われる方は多いと思います。
「深呼吸をして息を吸いましょう」なんていわれることも多いので「息を吸うこと」に悪いイメージは少ないかと思いますが、では、なぜ呼吸量が増加が身体に悪い影響を与えてしまうのか、酸素を脳や身体へ取り組むことができづらくなってしょうか?
それは血中の二酸化炭素に関係があります。
【呼吸量が多いと相対的に二酸化炭素の量が少なくなる】
酸素は血液中のpHに直接影響はありませんが、二酸化炭素は血中に溶けると酸性を示します。
*pH=水素イオン濃度の略称であり、溶液中の水素イオンの濃度を指す。
*健常な人の動脈血はpH7.35~7.45くらいで中性に近い値になり、ヒトは酸性、アルカリ性どちらに傾きすぎても身体に変調をきたす。(pHのバランスが取れないと健康を維持しにくい)
なので、血中のpHは二酸化炭素の量によって変化します。
呼吸量が多いと相対的に二酸化炭素の量が少なくなり血中のpHはアルカリ性に傾きます。
【二酸化炭素の量が少ないと…】
pHがアルカリ性に傾いていると言うことは、身体は「二酸化炭素不足」になっています。
これが一時的に二酸化炭素の量が少ないのであれば問題はないのですが、日常的に二酸化炭素不足が続くと身体に問題が起こります。
それは「酸素を効率よく脳や身体(細胞)に供給することができなくなる」ことになってしまいます。
酸素は呼吸によって体内に取り込まれたときに身体の隅々まで運ばれる時はヘモグロビンと結合して身体の中を移動します。「酸素飽和度(酸素と結合しているヘモグロビンの割合)」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、呼吸量が多い人でもこの数値は正常値(95-98%)になっていることが多いです。
しかし、「酸素飽和度」が正常だからといって「全身の細胞に酸素が行き届いているか」は別の話になります。
というのも、酸素はヘモグロビンと結合したままでは細胞に酸素を供給することができません。
ヘモグロビンから酸素を細胞に移動させるときにどうしても必要なのが「二酸化炭素」になってきます。
細胞内と血液内に二酸化炭素があるからこそ、ヘモグロビンは酸素を細胞へ移動させることができるのです。
(これをボーア効果といいます)
なので、体内に二酸化炭素が少ない人というのは体内に酸素は取り組むことができても、細胞まで運ぶことができないという状態になるので、脳や身体への酸素の供給が滞ってしまいます。
そうなると脳や身体は酸素が不足し、適切な状態を保つのが難しくなり、身体にいろいろな影響がでることににつながってきます。
そうなると前回のブログのような内容になってしまうということです。
*細胞へ酸素を届けられないということは、持久力にも影響がでます…
呼吸の状態を保つためには「息を吐くことが大切」
理想的な呼吸とはココロやカラダの状態・状況、必要性によってその時に適切な呼吸の量や回数・方法を無意識に選択し、酸素が供給できるように調整できることを指します。
なので、今回紹介した安静時呼吸も努力時呼吸もどちらも大切になってきます。
ただし、そのバランスが崩れてくると身体に影響が出てしまします。
呼吸の状態が悪くなると
- 1日における努力時呼吸の割合が増える(首や肩で呼吸をする割合が増える)
- 呼吸量が増加する(換気量が増える)
- 息を吐きづらくなる(横隔膜が呼吸筋として機能しづらくなる)
といった状態になってしまいます。
そういった状態になり、脳や身体へ供給する酸素の量が減少すると、姿勢や動作、恒常性、精神状態など影響は幅広くなってしまうので、呼吸の状態を整えることが大切です。
なので、
- 酸素と二酸化炭素のバランスをとるためにも
- 横隔膜を使って呼吸ができるように(安静時呼吸ができるように)
しっかりと息を吐くことが大切になってきます。
まとめ
今回は「どういった呼吸の状態だといけないのか」ということをまとめていきました。
上記のような状態になっていると、呼吸が整っていないことがあるので、しっかりと呼吸のエクササイズが必要になってきます。まずはしっかりと息を吐くことが大切ですので、ふとした時間い息を履いてみるのもいいですね。
次回は、呼吸が姿勢や動作に与える影響をまとめていきたいと思います!
【参考文献】
1.パトリック・マキューン(2017)『トップアスリートが実践人生が変わる最高の呼吸法』、かんき出版
2.森本貴義、近藤拓人(2018)『新しい呼吸の教科書』、ワニブックス
3.大貫崇(2019)「呼吸力」こそが人生最強の武器である、大和書房
【合同会社noma】
都内や埼玉、神奈川を中心にパーソナルトレーニングを行なっています。
「なりたい自分、ありたい自分へ。」をコンセプトに、
- トップアスリートからスポーツ愛好家まで、スポーツにおけるハイパフォーマンスを追い求める人
- 仕事や家事・趣味など、身体に対して日々安定したパフォーマンスを求める人
を対象として、アスレティックトレーナーがトレーニング・リハビリテーションを通し、その人の「なりたい自分」「ありたい自分」に向けて共に試行錯誤しながら成長する場を目指しています。
nomaでは筋力や可動域向上や身体の使い方の改善といったスポーツのパフォーマンス向上はもちろんのこと、身体の悩みや痛み・不調に対して、エクササイズを通して「根本的な原因」にアプローチし、身体機能や姿勢の改善をしながら目標に向けてアプローチさせて頂きます!(お身体でお困りの方は相談から承ります。)
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