「nomaの健康についての捉え方」No.5

前回のブログでは、「身体にとっての良い状態」とはどういう状態かというのを掘り下げて考えていきました。身体を良い状態へとする為には、『体内の器官が「適切」に働き続けられること』を考える必要があり、その為にホメオスタシス(恒常性)というシステムが適切に働くように考えてコンディショニングを行う必要があるとお伝えしました。

今回は、もう少し視野を広くして「健康」とはどんな状態だろうということを考えていきたいと思います。

なぜ「健康」という状態を考える必要があるのか?というと、アスリートでもスポーツ愛好家でもスポーツを行う為にはまずは「健康」でなくてはいけません。試合で勝つ為に、試合に良いコンディションで挑む為に、日々質の高い練習をする為に、スポーツを楽しむ為に、まず大前提にあるのは健康であり命です。

自分のコンディションであったり、どんなコンディショニングをするかと考えた時にまず大前提に「健康」とはという状態を理解してこそ、その時に適したコンディショニングが選択できるのではないでしょうか?

ということで、今回は広い視野で「健康」について考えていきます。

健康の定義

WHO(世界保健機関:World Health Organization)では1947年に採択したWHO憲章で「健康」について次のように定義しています。

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

https://www.who.int/about/who-we-are/constitution#:~:text=Health%20is%20a%20state%20of,belief%2C%20economic%20or%20social%20condition.

日本WHO協会のホームページでは以下のように訳しています。

健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。

https://japan-who.or.jp/about/who-what/identification-health/

「健康」というと、風邪をひいたというような病気の有無であったり、疲労が溜まっていたりだるさがあるといったいわゆる「元気ではない」肉体的な状態を示すイメージが多いかと思いますが、WHOの憲章では“肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。”ということが書いてあり、肉体的な要素以外にも精神的な要素や社会的な要素も「健康」を保つ為には必要な要素というように定義されています。

例えば、腰痛を発症する原因を考えると筋肉や骨、関節などの原因が最初に考えられるかもしれませんが、最近の研究では腰痛は、筋肉や骨といった整形外科的な要因以外にも内科的な健康状態であったり、その人の性格(考え方/捉え方など)、動き方、心理社会的ストレス、神経学的な要素(動作制御など)といった様々な要因が複雑に絡んだ結果起こる症状として報告されており1)肉体的な部分の状態が良ければ健康であるとは限らないと考えられています。

なので、腰が痛くなったからといって筋肉に対してマッサージをしても、実は職場環境や家庭環境などのストレス、睡眠不足などといったものが腰の痛みの原因となっている場合、マッサージだけでは一時的な痛み軽減ができたとしても腰痛の根本的な原因の解決には繋がらないこともあります。

そういうことを踏まえて考えると「健康」の状態が乱れた時は解剖学的な身体のことだけではなく、精神的な要素や社会的な要素といった面も含めて健康が乱れている原因を考える必要があります。

BPSモデルという考え方

身体の痛みや不調、病気や健康を理解する為には、生物的な観点からではなく心理的・社会的観点からのアプローチも重要という考え方が多くの医療の現場で言われるようになってきました。私も3〜4年前にATC(アメリカのアスレティックトレーナー資格)の川尻隆さんのセミナーを受けたときに初めてこの考え方を聞き、自分の中での身体の捉え方・考え方としての軸になっていきました。

この生物的・心理的・社会的3つの観点からのアプローチという考え方はBPS(Bio Phyco Social)モデルと呼ばれており、1977年にジョージ・エンゲルという方が提唱したのが始まりです。BPSモデルは日本語でいうと生物的・心理的・社会的モデルとなり、ヒトは生物的・社会的・心理的な要素が相互作用して成り立っている為、症状に対して3つの観点からのアプローチが必要という考え方となります。

このBPSモデルですが、先ほどいった川尻隆さんが説明しているブログが一番わかりやすいので、興味を持った方は見てみてください!下にリンクを貼っておきます!(その他の記事もとてもおもしろいです)

身体を多角的にみたコンディショニング

WHOの健康の定義やジョージ・エンゲルが提唱したBPSモデルを考えた上で、自分が健康である為に日々どのようなコンディショニングが必要かを考えてみます。

コンディショニングと聞くと、ストレッチやマッサージといったものがよく挙げられますが、前回の恒常性の話や今回の「健康」定義などを踏まえて考えてみると、「コンディショニング」といったものが多角的に考えられるのではないでしょうか?

ケアと呼ばれるストレッチやマッサージだけではなく、睡眠や栄養、ストレスへの対応、人付き合い、自分がどのような環境にいるかなど自分のコンディションを向上させる上ではたくさんの要素が関係してきます。No3.のブログでも説明しましたが、コンディションにはいろいろな要素が自分の状態に関わっているということが考えられるので、これだけやればよいというもはなく、いろいろなことに注意しながら身体の状態を整えていくことが大切となります。

そんなこといっても何からやってみたらいいのか…という人は、前回のブログで話したように①よく食べる②よく寝る③生活リズムを保つ④適度に運動する⑤ストレスとうまく付き合うといった「あたりまえ」といわれることを「あたりまえ」に行うことを心がけてみたり、life work balanceといった言葉があるように、仕事とプライベートの両立などココロの状態を豊かにする為に、休みの時間の過ごし方なども考えてみてはどうでしょうか?

アスレティックトレーナーとしての立場から

アスレティックトレーナーとしての視点からも身体に対してアプローチする為にはBPSモデルのように生物的な観点からではなく心理的・社会的観点からのアプローチが必要だという考え方は大切だと思います。なので、身体の状態を評価する場合は広い視野で身体を捉えるといったことが必要になってきます。

ただ、私のアスレティックトレーナーという立場を考えると、「広い視野で身体を捉える」ということはもちろん大切かもしれませんが、全ての領域において私がアプローチできるかといえばそれとこれとは違います。

あくまで私がアスレティックトレーナーという専門家としてアプローチできる範囲は運動療法を中心とした身体へのアプローチのみとなります。心理的な問題であったり、社会的な問題に関してはその分野の専門家のアプローチが必要です。また、私は鍼やあん摩マッサージ指圧師といったような医療資格は持っていませんので、身体に対してのアプローチも全てができるわけではありません。

なので、クライアントさんに対しては問診を含めた身体の評価をする場合、広い視野で身体を捉える為に生物的な観点からではなく心理的・社会的観点から身体の状態を評価するようにしていますが、アプローチに関しては自分の専門領域としてできる範囲を見定めながら対応するように心がけています。身体の分野でも治療家や医師に力が必要と感じればその専門家を紹介しますし、心理的な・社会的な問題の要素が大きいのであればそちらの問題に対してどのように対処するかを相談しながら、必要であればその専門家へ相談するよう勧めることも必要だと考えています。

ヒトの身体はとても「複雑」です。なので、ケガや病気の原因も1つとは限りませんので、これが絶対原因だと決めつけるのは危険です。あらゆる可能性を考えながらもその時に自分がアプローチできる範囲のもので最適なものを常に選択し対応できるように自分の立場としては日々成長していきたいなと考えています。

まとめ

今回は、「健康」とはどんな状態だろうということを考えてきました。自分が思っていたよりも幅広い要素が「健康」に絡んでいたかなと思います。なので、なかなか状態がよくならない、痛みが治らないとなったときにはちょっと違う視点からアプローチすることも考えてみてはどうでしょうか?

参考文献

1)Stuart McGill Previous history of LBP with work loss is related to lingering deficits in biomechanical, physiological, personal, psychosocial and motor control characteristics Ergonomics. 2003 Jun 10;46(7):731-46.

2)Francesc Borrell-Carrió The biopsychosocial model 25 years later: principles, practice, and scientific inquiry Ann Fam Med. Nov-Dec 2004;2(6):576-82. 

【リンク】

1)公益社団法人 日本WHO協会

【合同会社noma】

現在都内や埼玉、神奈川を中心にパーソナルトレーニングを行なっています。

「なりたい自分、ありたい自分へ。」をコンセプトに、

  • トップアスリートからスポーツ愛好家まで、スポーツにおけるハイパフォーマンスを追い求める人
  • 仕事や家事・趣味など、身体に対して日々安定したパフォーマンスを求める人

を対象として、アスレティックトレーナーがトレーニング・リハビリテーションを通し、その人の「なりたい自分」「ありたい自分」に向けて共に試行錯誤しながら成長する場を目指しています。

nomaでは筋力や可動域向上や身体の使い方の改善といったスポーツのパフォーマンス向上はもちろんのこと、身体の悩みや痛み・不調に対して、エクササイズを通して「根本的な原因」にアプローチし、身体機能や姿勢の改善をしながら目標に向けてアプローチさせて頂きます!(お身体でお困りの方は相談から承ります。)

ご興味を持っていただけた方は、下記から予約ができます。

関連記事

PAGE TOP